土に還る壁紙、掘り起こしてみました。

week0_DSC_0024-02 今日と明日と未来とホンポ

2021年の師走某日。
冬の海風が吹き込む寒い日に、ホンポの本社敷地内にある庭(ワルパーク)に自然素材から作られた2種類の壁紙を埋めました。

この春に、それを掘り返してみたときのご報告です。

 

「土に還る」壁紙を埋めた経緯

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昨年「土に還る壁紙」という謳い文句と共に発売した、自然素材の壁紙。
土に還る壁紙がなぜ環境にやさしいのかについて考えながら、

「どのくらいで土に還るものなの?」
「そもそもほんとうに土に還るの?」

という疑問を払拭すべく実験することにしたのです。

埋めたのは亜麻から生まれた壁紙FLAX WALLPAPERと、野菜から生まれた壁紙Food Paper
ついでに、たまたま手元にあった、土に埋めると堆肥化されるという「生分解性プラスチック」のフォークも埋めてみました。

埋めたときの詳細はこちらの記事にまとめています。

土に還る壁紙、埋めてみました。

掘り返した日の予期せぬ出来事

いつかそのうち還るだろう、という淡い期待を胸に寒い冬を越し、桜の季節になりました。
春の陽気に誘われて「一度掘り返して様子を見てみるか」ということになりました。

3月の終わり、うららかな日差しのなかスコップを持ってワルパークへ。
立てた看板の周りには、暖かな太陽を浴びて急激に伸び始めた雑草たちが生い茂っていました。看板がなければ埋めた場所を探し当てられなかったと思います。

雑草をむしり取って、掘ります。
無心に掘っていたので経過写真を撮り忘れました。

 
まず、案外すぐに生分解性プラスチックのフォークが出てきました。

生分解性プラスチックフォーク

生分解性プラスチックフォーク

もうちょっと深く埋めた気がしましたが、拍子抜けするほどポッと出てきました。
土で汚れているものの、しっかりとフォークのフォルムを保っています。
分かりづらくて申し訳ないのですが、スコップの横にある白い物体がフォークです。

思った通り。
土に還るとはいえ、やはりだいぶかかりそうだな。

そんなことを考えながら掘り進めました。
が、同じ深さに埋めたはずの壁紙たちが一向に見つかりません。

記憶の隅に残っていた印象的な木の根っこを掘り当てたとき、疑念は確信に変わりました。

2種類の壁紙が跡形もなく消えている・・・。

生分解性プラスチックのフォークが埋めた印象より浅いところから出てきたことから、雨風の影響で壁紙が地上に出てしまったことを疑いました。
鳥が巣作りに持っていってしまったのでしょうか。

考えても真相は闇の中です。
その時唯一確かだったのは、自分たちの目的が頓挫してしまったということ。

 
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呆然とする私たちをからかうように、土の中からミミズが顔を出していました。

 

予期せぬ出来事からの再チャレンジ

落ち込んでいる暇はありません。
再び埋める壁紙を調達すべく、社屋に戻りました。
壁紙を探したりカットしたりしている間に、何人かのスタッフと言葉を交わしました。

「壁紙を掘り起こしたら何もなかったんです」

と言うと、10人中10人が

「嘘や」
「嘘でしょ」
「盗られたんちゃいます」

と言いました。
埋めた自分たちが一番「無いはずない」と思っていました。

壁紙が忽然と姿を消した理由や可能性としては、以下の3つが考えられました。

  1. 風雨や動物などの影響でどこかに行ってしまった(可能性大)
  2. 誰かが盗った(犯人の動機がだいぶ不明)
  3. 完全に分解された(ちょっと早すぎる)

 
事実を検証すべく、再びもとの2種類の壁紙に加え、新たに発売されて間もない丸だき和紙も埋めることに。
元の穴だけでは収まりきらなかったので、看板裏手に穴を追加しました。

 
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左から:Food Paper、生分解性プラスチックフォーク、FLAX WALLPAPER

左から:Food Paper、生分解性プラスチックフォーク、FLAX WALLPAPER

左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper

左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper

冬に掘った看板前の穴には、元の通り、Food Paper、生分解性プラスチックフォーク、FLAX WALLPAPERを。
新たに掘った看板裏手の穴には、丸だき和紙とFood Paperの境目に、生分解性プラスチックのスプーンを埋めました。

 

掘り起こしの経過報告

今度は念のため、1週間〜数週間おきに経過を観察することにしました。
かなりのペースアップです。

1度目の掘り起こし(1週間経過)

左から:丸だき和紙、生分解性スプーン、Food Paper

左から:丸だき和紙、生分解性スプーン、Food Paper

埋めてから1週間後。
水分を含みふやけた様子でしたが、ほぼ原型をしっかり留めています。

左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper、Hattan、ビニール壁紙

左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper、Hattan、ビニール壁紙

比較のために、看板裏手の穴をさらに掘り広げ追加でHattan(不織布)と国産のビニール壁紙を埋めました。

 

2度目の掘り起こし(3週間経過)

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埋めてから3週間後。
角の方からだいぶ破れ始めている印象。スコップによる掘り返しのダメージもあるのか?

左から:Food Paper、生分解性プラスチックフォーク、FLAX WALLPAPER

左から:Food Paper、生分解性プラスチックフォーク、FLAX WALLPAPER

かなり傷み始めているものの、まだ紙状のものがしっかりと残っているのが分かります。

左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper、Hattan、ビニール壁紙

左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper、Hattan、ビニール壁紙

丸だき和紙

丸だき和紙

ビニール壁紙

ビニール壁紙

自然素材の壁紙と、ビニール壁紙に、形のラインにはっきりとした差が生まれていました。
左側の丸だき和紙は形のラインが崩れ始めているのに対し、右側のビニール壁紙は角のラインまでくっきりとしています。

 

3度目の掘り起こし(7週間経過)

埋めてから7週間後。
2度目の掘り返しの後にゴールデンウィークを挟み、少し期間が空いてしまいました。
1週目→3週目の様子から、そんなに急激な変化は起きないだろうと予想していたこともあります。

掘り返してみると、これまでの通りすぐに見つかる生分解性プラスチック。
・・・しかし、その両側にあるはずの自然素材の壁紙2つが見つかりません。

左から:(丸だき和紙)、生分解性プラスチックスプーン、(Food Paper)、Hattan、ビニール壁紙

左から:(丸だき和紙)、生分解性プラスチックスプーン、(Food Paper)、Hattan、ビニール壁紙

Before

2度目に掘り起こしたときの様子を振り返ってみましょう。

2度目の掘り起こし(3週間経過)

2度目の掘り起こし(3週間経過)
左から:丸だき和紙、生分解性プラスチックスプーン、Food Paper、Hattan、ビニール壁紙

スプーンの両側に、丸だき和紙とFood Paperがあります。

After

こちらが、3度目に掘り起こした様子。

左から:生分解性プラスチックスプーン、Hattan、ビニール壁紙

3度目の掘り起こし(7週間経過)
左から:生分解性プラスチックスプーン、Hattan、ビニール壁紙

・・・やはりない!
左側の2種類、丸だき和紙とFood Paperがありません。
もう一つの穴に埋めた、Food PaperとFLAX WALLPAPERもありません。

初めて掘り起こしたときと同じく、自然素材の壁紙がすべて忽然と姿を消していました。

ほんとに無いのか・・・??
土の中をこねくりまわし入念にチェックすると、唯一紙のカケラのような残骸を見つけました。

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これは場所からして、丸だき和紙の破片と思われます。
その他のFood Paper、FLAX WALLPAPER は破片すら見つけることができませんでした。

比較のため隣に埋めていた塩化ビニール壁紙がしっかりと原型を留めたままその場にあったので、むやみやたらと深く掘り進める必要はありませんでした。

 

「土に還る壁紙」の結論

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7週目で、ほぼ完全分解
途中経過を観察していたこと、また、小さな破片を見つけたことから分解されたという確信を持つことができました。

分解の印象としては、ラストスパートがすごい。
もう少し後を引くのではという素振りを見せていたのに、見事なまでに消え去りました。

かろうじて壁紙の破片らしきものが残っていたことから、おそらく3回目の掘り返し(7週間経過)からさほど遡らない頃にほぼ完全に分解されたのだと思います。

4〜5月の時期に1ヶ月半ほどで分解されたということは、冬場でも4ヶ月という期間は分解されるのに十分な時間だったということが予想されます。
梅雨や夏場だと、もっと早いはず。

そのうち分解するだろうとは思っていましたが、身近な環境下(会社の庭)に埋めてこんなに早く分解するなんて、ホンポの誰も予想していませんでした。

改めて流れを振り返ると以下の通り。


2021年12月初旬:埋めてみた

2022年3月末:掘り起こしたら無くなっていた

嘘やろ!

もう一回埋めてみた

2022年4月〜:定期的に掘り起こし開始

2022年5月中旬:1ヶ月半ほどで完全分解された

 
二度手間になったものの、身をもって「土に還る壁紙」についての真実を証明できてうれしく思います。

結論。

土に還る壁紙の素材は、ほんとうに土に還ります。
思ったよりもスピーディーに。

分解までの道のりが長そうな生分解性プラスチックのフォークとスプーン、そして、比較のために埋めたビニール壁紙とHattanは、穴に戻しました。

左から:ビニール壁紙、生分解性プラスチックスプーン・フォーク、Hattan

左から:ビニール壁紙、生分解性プラスチックスプーン・フォーク、Hattan

Hattan(不織布)は、ビニール素材と比べると環境負担の少ない素材ですが、リサイクルポリエステルやレーヨンという化学繊維でできています。

引き続き様子を見守りたいと思います。

環境にやさしい「土に還る壁紙」。
ほんとうに土に還った「土に還る壁紙」。

ホンポのさらなる模索は続きます。

 
 
 

7週間で土に還った壁紙はこちら。

 
 

ウエマツ
profile
3度目の掘り起こしの日、10箇所くらい藪蚊に刺され全身かゆい夢を見ました。
次は蚊がいなくなってからと心に決めた。

 
 

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