公開日:2026.07.23
日本の素晴らしいアーティストやデザイナーと手を組み、新しい MADE IN JAPAN の壁紙を世界へ発信する壁紙ブランドWALLTZ(ウォルツ)。
「WALLTZ CREATORS」では、WALLTZに所属するクリエイターの活動や制作の背景をご紹介します。
今回お話を伺ったのは、妖怪美術館の館長であり、日本の妖怪文化を国内外へ発信するアーティスト・柳生忠平さん。
日常に息づく妖怪の魅力を作品を通して伝え続けています。
ふすま絵を制作されている京都の宿泊施設を訪ね、創作の原点や活動についてお話を伺いました。
CREATOR PROFILE | 柳生忠平
柳生忠平|cyubei yagyu
香川県小豆島生まれ。
1998年 宝塚造形芸術大学卒。
2004年 「絵描鬼」宣言をして活動開始。
2018年 小豆島・妖怪美術館の館長に就任。
東京・京都をはじめ、フランス・上海・台湾など世界で個展やグループ展を開催。 フランスにある国際アートセンターLa Porte Peinteにて約30点の作品を滞在制作。
2023年 米紙「ニューヨーク・タイムズ」掲載。
ライブペイントや妖怪風似顔絵などのパフォーマンスも積極的に行っている。 @yagyuchubei
ふすま絵の制作について
ー これまでたくさん妖怪の絵を描いてこられたと思いますが、ふすま絵を描くことはありましたか。
今までは、古い建具などに描くことが多かったので、古いふすまにライブペイントすることはありましたが、実際に使うふすまに描くのは今回が初めてです。
ー 普段の制作とふすま絵の制作とでは、なにか違いがありますか。
普段は岩絵具を使うのですが、岩絵具(※)は塗ったときに絵具が盛り上がるんです。
(※)天然の鉱物や石を砕いて細かい粒子にしたもの
そうすると、ふすまを開け閉めしているうちに盛り上がった絵具がどんどん壊れていくのではないかと思い、今回は違う絵具を使うことにしました。
初めは墨で描こうとしていましたが、墨だとちょっと濃いなと思ったので、日本画でよく使われている「水干(すいひ)」という絵具を膠(にかわ)や水などで濃度を薄く調整して、水彩のような使い方で描いています。
そうして薄い線を何本も重ねたり、線と線をずらしたりすることで濃淡を出しています。
ー 使っている色について教えてください。
皮鉄(ひてつ)という色が好きでよく使っています。
水分を少なめにして濃い線で描くこともありますし、整った綺麗な線だけでなく線を二重に重ねたり。少しぶれたような“揺らぎ”のある線も、この1~2年ほどはよく取り入れています。
すべての細胞や物質、もっと広い単位でいえば宇宙空間も振動しているという話があって、そのことを知ってから目には見えない振動や揺らぎを線によって表現しています。


ー 下絵には時間がかかりますか。
最初に、小さな紙にたくさんスケッチを描きながらテーマやタイトルを考えるので、下絵に辿り着くまでにまず時間がかかります。
たくさん描いたスケッチの中から、最終的に3案に絞って施主の方へ提案しました。
打ち合わせの段階では、京都にちなんだ妖怪を描く案もありましたが、僕のオリジナル妖怪たちを紹介したところ気に入っていただけて。最終的には、その中から選ばれたデザインで制作しています。
▲たくさんのスケッチを経て選ばれたデザインの下絵
オリジナル妖怪について
▲忠平さんが生み出した妖怪「みちしるべぇ」
ー オリジナル妖怪「みちしるべぇ」の誕生秘話などあればお聞かせください。
「みちしるべぇ」は、道案内の妖怪として生まれました。
また、妖怪美術館がある小豆島の「迷路のまち」という場所性も、このキャラクターの背景につながっています。
迷路のような路地の中で、「こっちに行くと妖怪美術館があるよ」「この先にはこんな場所があるよ」と案内してくれる存在として、各所に「みちしるべぇ」を描いています。



▲小豆島・迷路のまちにある妖怪美術館 妖怪美術館・迷路のまち 公式サイト
壁画として「みちしるべぇ」をたくさん描いていく中で、自分の作品にも登場するようになり、「壁に描いてほしい」「展示をしてほしい」「この作品が欲しい」と声をかけていただく機会が増えていきました。
そうした経験から、人や場所とのご縁をつないでくれる存在でもあると感じ、今では“道案内”だけでなく、“縁をつなぐ妖怪”として描いています。
▲「みちしるべぇ」 から生まれた「ちびしるべぇ」
ー 「みちしるべぇ」のほかに「ちびしるべぇ」という妖怪がいますが、どのような妖怪でしょうか。
「ちびしるべぇ」は、「みちしるべぇ」から生まれた子どもです。
オタマジャクシがカエルになるような感覚で、「みちしるべぇ」が細胞分裂のようにして生まれた存在として「ちびしるべぇ」を描いています。
最初は目が1個だったものが2個になり、口ができて、手が生えて…と、成長していきます。「ちびしるべぇ」だけのファンもいて、中には「ちびしるべぇ」の作品だけを何枚も集めてくださる方もいて、描き続けるうちに、どんどんとストーリーも自然と広がっていきました。
妖怪を好きになったきっかけ
ー 妖怪に興味を持ったきっかけ、また妖怪の魅力についてお聞かせください。
今から40年ほど前、小学生の頃に水木しげる作品に出会ったことでした。
そのとき初めて「妖怪」という存在を知り、「ゲゲゲの鬼太郎」の漫画を読んでいたら、TVアニメの放送も始まりました。
そのころの作品では、ゴミ問題など社会問題に切り込んだエピソードも多く、それが特に印象に残っています。
たとえば、“夢の島”と呼ばれていたゴミ処理場に捨てられていた風呂釜を「あかなめ」という妖怪がなめたことで放射能の影響を受け、大きくなってしまう話がありました。「あかなめ」は暴れたり敵として描かれるのではなく、鬼太郎に「助けてほしい」と訴える存在として描かれていたのが印象的で、単に妖怪をやっつける物語ではないところに惹かれていました。
妖怪似顔絵について
ー イベントでは、会話をしながらその人の内面を妖怪風に描く「妖怪似顔絵」を制作されていますね。弊社のイベントでも、「妖怪似顔絵」屋さんとしてご参加いただきました。
似顔絵を描くときは、角や牙を入れた“鬼”のような表現になることが多いですね。
昔から、人が内面に隠し持っている感情や、本心を隠したり、人を化かしたりするような性質は、大体“鬼”に例えられてきたと思うんです。
温厚そうに見えて、実は家ではめちゃくちゃ角が立っているみたいな・・・ 「鬼嫁」などの言葉があるように、鬼という存在は人間らしさの象徴でもあるのかなと感じています。


▲心の中に潜む妖怪をあぶり出す妖怪似顔絵
本の出版について
▲妖怪の魅力がギュッと詰まった妖怪図鑑のような本
ー 2024年9月に「POP YOKAI 現代百鬼夜行」を刊行されました。フランスの出版社から出版されることになったきっかけについて教えてください。
今回の作品集を出版しているのは、「ROCKBOOK」というフランスの出版社です。
もともとは海外の出版社で働いていた方が、旦那さんと一緒に立ち上げた出版社です。
出版社の方が香川出身で、妖怪美術館を訪問してくださり、息子さんが僕の作品や妖怪のファンだったことをきっかけに、「本を出したい」と声をかけていただきました。
制作には1年半ほどかかり、日本では2024年9月に発売、その後2024年11月頃から海外でも流通が始まり、多くの注文をいただいています。
▲本の中で紹介されている妖怪たち 漫画やアニメのキャラクターのように捉えられることも
ー 海外の方にも妖怪が人気なのは面白いですね。
そうですね。いろんなアーティストの方がそれぞれオリジナルの妖怪を作っているというところも「POP YOKAI」の醍醐味です。
また、僕が紹介している香川ローカルの妖怪も今までの妖怪本にはない内容になっています。昔描かれた妖怪の絵や、まだ誰も使っていないだろうなというような無名の妖怪絵巻なども紹介しています。
現地で制作する理由
ー 現地制作されることが多いと思いますが、その理由を教えてください。
極端に言えば、必ずしも現地で描かなくても制作自体はできます。
ただ、現地で描くのにはいろんな理由があって、大きい理由のひとつは、完成した作品を移動させる際に破損してしまう不安があること。
そしてもうひとつは、その場所の空気感の中で描くことを大切にしているからです。
実際に壁にはめ込んだ時にどう見えるかは、現場でないと確認できません。
離れた場所で制作していると、その場で見てもらいながら調整することも難しいので、やはり現地で描くことにこだわっています。
完成したふすま絵




「百鬼加良加良圖(ひゃっきからからず)」
完成したふすま絵には「みちしるべぇ」が率いる妖怪たちの百鬼夜行の様子が描かれています。
それぞれの物語を想像しながらキャラクターを描くという、忠平さんの妖怪愛が詰まった作品となっていました。
▲「百鬼加良加良圖(ひゃっきからからず)」のふすま絵がある宿泊施設
華・瓢箪 Calla Villa
京都・三条商店街の利便性と、二条城を望む格式あるロケーション。
京町家の構造美をそのままに、現代的な快適性とラグジュアリーな設備を融合させた一棟貸し宿です。
〒604-8326
京都市中京区大宮通三条上る姉大宮町東側94番地、95番地
075-708-8568
華・瓢箪 公式サイト
動画で見るインタビュー
柳生忠平さんのインタビューは、YouTubeでもご覧いただけます。WALLTZでの取り扱い商品|柳生忠平の壁紙
WALLTZでは、柳生忠平さんデザインの壁紙を取り扱っています。詳しくは、以下の商品ページよりご確認ください。
制作・撮影/株式会社フィル WALLTZチーム
※インタビュー/2023年12月実施



2018年よりWALLTZを担当。
先代猫は21歳まで生きたので猫又になってたのかも。
猫、アート、レトロ建築好き。