大正ロマン(たいしょうロマン)
大正時代の雰囲気を伝える思潮や文化事象を指して呼ぶ言葉である。
「大正ロマン」という言葉を見ると、どんなものが思い浮かぶでしょうか。
和洋折衷、近代建築、ハイカラ、着物にブーツ、モダンガール&ボーイ…日本独自の伝統文化を解き放ち、西洋文化をMIXした華やかな印象が思い浮かびます。
大正時代は1912~1926年とわずか15年という短い期間でしたが、その僅かな年月で驚くほど文化が発展していった時代でもあります。
明治時代に迎えた文明開化により「西洋のものならなんでもいい」という風潮から、大正時代に入り、和の文化もミックスさせたオリジナリティあるスタイルが確立されていきます。
ファッションでは欧米式美容室が登場し、洋髪×制服やセルの袴といったスタイルが生まれました。芸術文化では歌謡曲やジャズが流行り、現在の映画の元となる活動写真が登場。食文化では洋食が始まりカフェやレストランが成長していきました。
建築文化では、アールデコ装飾を散りばめた洋館風だけでなく、外観は「和風」を残し内装や家具は「洋風」仕上げといった建物が多く登場しました。現代ではレトロモダンや和洋折衷と呼ばれるスタイルですね。
次々と新しく生まれる流行と成長していく日本に、人々は期待と希望が満ち溢れていたことでしょう。しかし災害や戦争といった辛く苦しい面もあった時代。混沌、陰と陽、激動の時代といわれ、不安定な世を生き抜く人々は、打開するかのように魅力的な芸術作品を生み出していきました。
大正を象徴する文化人、竹久夢二もその一人です。
憂いを含んだ独特の世界観の『夢二式美人画』で広く知られ、今なお人々を魅了し続ける作家。
絵画の世界にとどまらず、書籍装丁やポスター、千代紙や手ぬぐいなどの日用雑貨など商業美術・グラフィックデザイナーとして優れた仕事を多く残しています。
「夢二が今の時代に生きていたなら、どんな壁紙をデザインしただろう」
そんな想いのもと、作られた竹久夢二の壁紙。
和紙のような質感と、デザインされた当時を彷彿とさせるようなやさしい色使い、大胆な幾何学パターンや繊細な植物柄は、壁のみならずふすまに貼っても大正ロマン・レトロモダンが感じられるような素敵な仕上がりになります。
さらに、雑誌の表紙絵や挿絵から生み出された壁紙は、一つ一つのデザインに叙説がついています。
竹久夢二がどのような着想を得てデザインしたのか、イメージ写真だけでなく文章としても楽しみながら選ぶことができる壁紙です。
「古きよきを新しく、暮らす」
大正が終わって間もなく100年が来ようとしています。
DIYやリメイク、セルフリフォームやリノベーションなど、破棄したり壊したりせず生まれ変わらせる事が広く浸透しつつあるいま、古きよき伝統と新しさを融合し、文化を発展させた大正ロマン時代に通ずるものがあると私は感じます。
懐かしさとやさしさ、ノスタルジックさ溢れる竹久夢二のデザインは和洋入り混じった現在の住宅にもさらりと馴染みます。沢山のデザインが溢れる今だからこそ、日本の文化が拓くこととなった大正・和モダンのデザインをひとつ暮らしの中に取り入れてみるのはいかがでしょうか。
大正ロマンの「ロマン」。浪漫と漢字での表記もしばしば見かけます。当て字を付けたのは夏目漱石といわれているそう。
I love youを月が綺麗ですねと訳したことは有名ですが、ロマンもとは。【浪】波、一定のよりどころがない、流れるさま【漫】みだりに、そぞろに。大正浪漫まさに言い得て妙。私は浪漫と聞いたら米○CLUB。光る言葉のセンスが欲しいなあと切に願う2019年の年末。