にんじんの壁紙をポテトで貼る未来

carrots_potato03 今日と明日と未来とホンポ

こんにちは。
これから「今日と明日と未来とホンポ」というコラムを発信していくことになりました。
こちらのコラムでは、壁紙を販売するホンポの「今」と、私たちの描く「未来」の話をさせてください。

初回である今回は「にんじんの壁紙をポテトで貼る未来」について。

 

 

にんじんはひとまず置いておき

にんじんの壁紙をポテトで貼る未来。
何だかおいしそうで、たのしげな未来です。

たのしげな未来の話はひとまず置いておき、先にちょっとだけ真面目な話をしたいと思います。

最近日本でも、サスティナビリティやSDGs(エスディージーズ)といった言葉をよく聞くようになりました。2015年9月に国連サミットで決まったこの取り組みは、ざっくりいうと「みんなが今もこれからも生きやすい世界にする」ことを目指した目標です。

だから包装紙を自然素材に切り替えた企業の取り組みも「SDGs」になれば、LGBTのカップルが組める住宅ローン制度をつくった銀行の取り組みも「SDGs」になります。
おそらく水面下では多くの企業や団体が動きはじめていたのだとは思いますが、ここ1〜2年メディアでもよく取り上げられるようになり、私たちの耳にもよく入ってくるようになりました。

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うすうす勘づいてはいたものの「作りまくって、捨てまくる」そんなこれまでのモノとの付き合い方を根幹から見直さないとやばいですよという差し迫った危機が、思ったよりもすぐそこにきているらしいのです。

とはいえ、実際のところ。
地球のため未来のためなどと言ってはみても、ほんとうに行動を起こしているのはグレタさんと一部の意識の高い人たちくらい。と横目で見ている人がきっとまだまだ多いのではないでしょうか。
そう書きつづる私を含め。

 
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コロナ禍による鬱々とした現実に直面し、異常気象と思しき気候や天災に見舞われることもあります。
でも私たちを取り囲む生活形態そのものに大きな変化は見当たらないし、お金さえあれば食べ物に困ることもない。相変わらず夏は暑くて冬は寒く、あたたかい布団にくるまって眠ればまた同じ朝がきます。

もちろん深刻な状況に置かれている人は国内外を問わずたくさん存在しますが、普段生活するなかで身に迫る危機を実感することが無い人も、きっと多いだろうと思うのです。

2020年パリで開催されたメゾン・エ・オブジェの会場内。環境に関する看板とそれを見つめる同行スタッフU。

2020年パリで開催されたメゾン・エ・オブジェの会場内。環境に関する看板とそれを見つめる同行スタッフU。

一方の海外、特にヨーロッパの意識は目に見えて高く、その取り組みは進んでいます。
世界中のインテリア業界が注目する、ドイツのハイムテキスタイル(Heimtextil)や、パリのメゾン・エ・オブジェ(Maison & Objet)といったインテリアの見本市。こうしたイベントでは数年以上前から環境に配慮した自然素材への転向、PVCフリー(脱塩化ビニル)が加速し、もはやスタンダードな価値観となっています。

2020年ハイムテキスタイル会場内「未来の素材」展示場

2020年ハイムテキスタイル会場内「未来の素材」展示場

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会場内のサインがすべて紙製だとアピールする看板

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床のサインも紙製

街中にも「Sustainable(サスティナブル)」の文字があふれていますが、政府や企業だけでなく一人ひとりの意識も日本のそれとはかなり違う次元にあるといえるでしょう。

パリの街中、地産地消のリネン生地についてアピールした広告

パリの街中、地産地消のリネン生地についてアピールした広告

 
じゃあだからといって、個人でできることってなかなか思いつかないし、限られている。
正直いうと、めんどくさくもある。
そんなもんですよね。

牛乳パックを切り開いて洗って資源ゴミに出すよりも、燃えるごみとして捨ててしまえた方が「楽」ですし、環境に配慮された高価なアイテムより、同じブランド、同じクオリティであれば「安い」方を選んでしまうでしょう。
みんながこうではありませんが、これが今の日本の平均的な感覚ではなかろうかと思います。

でも強制的に状況を変えられてしまうことで、意識が変わることはあるはずです。
たとえば昨夏始まったレジ袋の有料化。近年の生活のなかではかなりインパクトのある変化だったのではないでしょうか。

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「結局買って使うだけ」「エコバッグの過剰な生産や買い替えが逆に環境の負担を増やしている」など問題視する声もあります。
でも個人的には少なくとも、たかがレジ袋1枚を大切に扱う感覚が芽生えました。無料だった頃は自宅に大量のストックを持て余し定期的に捨てていましたが、今はレジ袋を単体で捨てるということはまずありません。

正解はわからなくても、こんな小さな意識の変化が何かにつながっていけばと期待します。

 
 
そして私たち、ものづくりに携わるホンポは。
壁紙の製造にも携わる1つの組織として、おのずと何をどう作るのかというところが重要になってきます。これまでやってきたこと、自分たちにできることを改めて見つめ直して整理し一つひとつやっていくことに決めました。

小難しく考えず、たのしいことなら自然とたくさんの人を巻き込むことができるはず。
そうやってみんなでいい方向に進んでいければいいなと思うのです。

 

にんじんの壁紙をポテトで貼る未来

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ここでやっと冒頭のにんじんとじゃがいもの話に戻ります。
あ、ポテトでした。

日本で製造・販売されている壁紙、年間およそ7億m2
ちょっとピンとこない数字ですが、面積の広い壁や天井を覆う「壁紙」は、床材などと比較しても生産量の桁が違います。そしてその大部分を占めるのがビニール壁紙。

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途方もなく大量に生産され、その製造過程だけで実に生産量の3〜10%が破棄されているといいます。これは少なく見積もっても東京ドーム400〜600個分の面積。また、正確には把握されていませんがメーカーの抱える廃番在庫も毎年大量に破棄されています。
壁紙業界全体に課せられた使命もまた、大きいといえるでしょう。

 
そんななかホンポは昨年「たくさん作ってたくさん捨てる」スタンダードから外れる、新たな壁紙を発売しました。

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貼ってはがせて繰り返し使えるパッチワーク壁紙、その名もHattan(ハッタン)

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受注生産なので在庫は一切抱えず、フェルトのような素材を水に浸して貼り、剥がして、また貼ってと繰り返し使えるので、気に食わなくなるその日まで繰り返し使うことができます。
素材はレーヨンとリサイクルポリエステルからなる不織布で、塩化ビニールの壁紙と比べ製造工程や素材自体も環境への負荷が低いのも特徴です。
つまり、地球にとってもフレンドリー!
でも、もしかすると他にもいい形があるかもしれない。

たとえばの話。
野菜ジュースなどをつくる過程で大量に出ているであろう「にんじんのしぼりカス」で壁紙が作れたら?
ホンポで取り扱っている貼ってはがせる壁紙専用のりの主成分、実はポテトのでんぷんです。

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もし、にんじんの壁紙をつくることができたら。
まさにそれは「にんじんの壁紙をポテトで貼る未来」なのです。
実際すでに、こういった食品廃棄物、たとえば野菜のカスや緑茶のでがらし、抽出後のコーヒー豆などを製品開発に利用する取り組みは、あちらこちらで進んでいます。
だからにんじんの壁紙だって、夢物語ではないはず。

ビニール壁紙が広く普及しているのにもそれなりの経緯がありますが、これしかないんだ、こうするしかないんだ、という思い込みを少しずつ変えていけたらいいなと思います。

 

今こんな話をはじめる理由

最後になりましたが、なぜ今こんな話を始めるのかお伝えしたいと思います。
その理由は大きく2つ。

理由その1

1つ目は、私たちが「なんとなく」やってきたこと、今やっていることを「意識化」したいと思ったから。

なんとなく歩いているだけでも健康に良いことには違いありませんが、姿勢や腹筋を意識して歩くとその効果は倍増するといいます。なんとなくニュースを聞いていると聞き逃すことも、何かを意識して聞くだけで知りたい情報をうまくキャッチできるようになったりもします。

つまり「意識」して取り組むってワンランク上の効果につながるようなので、これまで何となく描いていた未来のことを言葉で表し、そのために何が必要なのか意識化していくことにしたのです。

 

理由その2

2つ目は「発信する」ことで起きる変化や、新たな出会いがあると思うから。
一対一のコミュニケーションですら、思っているだけじゃ伝わらないことってたくさんありますよね。
みんながみんな相手のことを察し合えたらいいのですが、どうやら私たち人間そんなに上手くできていません。考えていること、取り組んでいることを発信することで、もっと皆さんに私たちのことを知ってもらえたり、いい出会いや化学反応があるかもしれない。

こんな理由で、このコラムを始めることにしました。

 

おわりに

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あったらいいなを形にしてきた、地球に住む私たち。

にんじんかどうかは置いといて。
ポテトかどうかは置いといて。

意識高い系の人たちの話ではなく。
わかってはいてもめんどくさい話でもなく。
たのしくていつのまにか巻き込まれてしまった話。

そんなストーリーを実現すべく、ホンポはにんじん片手に自分たちの進むべき未来を描きます。

「オモロくなくちゃ始まらない」をモットーに、そんなに壮大ではないけれどたのしげな未来へ進む、私たちの今日や明日の話をお届けできたらと思います。

ウエマツ
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そんじょそこらのめんどくさがりには絶対に負けないめんどくさがり。やらなければいけないことに目を伏せたときの後悔は、痛いほどに知っている。