プロローグ
「大理石」と聞いて思い浮かべるのは、白く滑らかでぴかぴかと輝く石。
宮沢賢治は真っ白な凍った雪を例える際に、アンデルセンはお城や彫像など立派な美術品を表現する際に作品の中でたびたび登場させました。
国や生きた時代も異なる童話作家たちが描写として用いるほど、世界に広く知られた石の名前。
それが「大理石」です。
大理石はホテルや百貨店、銀行など格式のある建物に使われているのをよく目にします。
石そのものが放つ気高さや威厳のある佇まいは、そういった建物の内装にこの上なく適しています。
大理石が引き立たせるのはノーブルなインテリアにとどまりません。
お風呂やキッチンなどの水回りに清潔感を、北欧スタイルではナチュラルな風合いを、時には空間に洗練されたモダンな印象を与えてくれます。
近年ではネイルや雑貨など様々なものに柄が取り入れられ、
雑貨屋さんやSNSでもおしゃれな小物が並ぶなど、まさにトレンド真っ盛り。
その人気の秘密が隠された扉を、少し覗いてみましょう。
大理石と歴史
そもそも大理石とはいったいどういうものなのか、ご存知でしょうか?
その成り立ちまで知る人は、さほど多くはないかと思います。
かくいう私も、この記事を手掛けるまでは「なめらかで艶のある、なんだか高価な石」程度の知識しかありませんでした。
調べてみると、大理石の正体は石灰岩から生まれたものであるようです。
貝やサンゴ、動物の遺骸などが海の底で積み重なって固まった石灰岩が、年月を経て熱や圧力によって再結晶化して変質した石。
まさしく大地のロマンとカルシウムがそこには詰まっています。
「大理石が醸し出す独特の重厚感は、地球の歴史の重さなのだ」なんてどこかの偉い人に説かれたら、思わず納得してしまいそうです。
そんな大理石は、名前の成り立ちも立派なものです。
英語では「marble マーブル」と呼ばれる大理石。
「marble マーブル」は、古代ギリシア語の「marmaros
マルマロス」=「輝く石」との意味を持つ単語から派生した言葉です。
由来から読み取れるように、遥か昔を生きた人々の目にも、大理石は他と一線を画す魅力的な石に映っていたのでしょう。
そして日本語の方はというと、古代中国、現在の雲南省にあたる地域に存在していた「大理国」で採れた石であるというのが由来です。
現在でも雲南省には「大理市」という小さな街があり、大理石の産地として知られています。
大理石は、世界中の多くの歴史的建造物や彫像に使用されています。
例を挙げると、ギリシャの「パルテノン神殿」インドの「タージ・マハル」
イタリアの「ミラノ大聖堂」や、ルーヴル美術館の「ミロのヴィーナス」などが有名ですね。
「橋の下で日没の刻にゴンドラに乗ってキスをすると、永遠の愛が約束される」
なんて言い伝えもあるそうです。
人々が如何に、大理石へ神聖なイメージを抱いているのかがうかがえます。
また、大理石は「石」なので、長い時を経ても変質しにくく、温度による変化にも強い素材です。
加工もしやすいので繊細な表現に向いていることも、建築資材として好まれる要因なのでしょう。
日本でも明治時代以降に、洋風建築の資材として使われるようになりました。
国会議事堂の建設にあたり、全国的に大理石資源を探すことをきっかけにその存在が広まっていったそうです。
今では一般家庭の内装にも取り入れられる、身近な建築資材となりました。
なぜ大理石は高いのか?
長く愛されてきた大理石ですが、高級感のある見た目のとおりに、なかなか値が張る資材でもあります。
例えば6畳の床を大理石に張り替えるとすると、目安ではありますが30~150万円ほどかかると言われています。
なぜ大理石はそれほど高価なのでしょうか?
理由としては、運搬にかかるコスト面が最も大きいかと思われます。
大理石は現在、建材として国内ではほとんど採掘されていません。
したがって国外から輸入しているのですが、その運搬が非常に大変なのです。
重たい石を何千kmも移動させる苦労は容易に察しがつきますが、そのうえ大理石は「割れやすい」というリスクまでのしかかります。
石材の中では比較的柔らかいこの石は、運ぶのにも細心の注意が必要となります。
送料が高くなるのも頷けますね。
また大理石は、切り出す箇所によって見せる顔が変わる石材でもあります。
マーブル模様を美しく配置するには、石の中でも使える部分が限られるということです。
このような運搬や使用箇所の厳選などの理由から、やむなく値段は高くなってしまうのです。
手頃に楽しむ大理石
大理石が高価な理由が明らかになりましたが「やはりインテリアに取り入れるのは難しい」と敬遠する必要はありません。
「本物」「天然」にこだわらなければ、もっと手軽に楽しむことができるからです。
アクリル樹脂やポリエステル樹脂を主成分とした「人工大理石」や、
テラゾーとも呼ばれる天然の大理石などを粉砕してセメントや樹脂で固めた「人造大理石」などは
天然大理石と比べると、安価で取り入れることができます。
しかしながら、
これよりさらに手を伸ばしやすいのが、「大理石柄」のアイテム。
ここからは、みなさまに魅力的な大理石をお手頃に楽しんでいただける商品をご紹介していきます。
壁や家具・小物に使える商品
輸入壁紙
国産壁紙と比較すると少々お高めではありますが、醸し出す上質さと個性が光るのが輸入壁紙。
裏の不織布(フリース)素材は、専用の糊で貼ると裏紙も残らずきれいにはがすことができます。
また、国産が幅約90cmなのに対して、輸入壁紙は約50cmと女性の肩幅くらいのサイズとなっており、施工がしやすいのも特徴です。
デザインのバリエーションが驚きの1万点以上にも上るPHOTOWALLというブランドの壁紙は、お部屋の壁に合わせてサイズを自由にカスタマイズすることができます。
大理石柄も、シンプルなものから個性的なものまでさまざまです。
建造物や街並みなどのデザインであれば、自室を新たな空間へと繋ぐことも。
タワーマンションの最上階に住むことも、お城の主になることさえできてしまう、夢いっぱいの壁紙です。
※PHOTOWALは2024年10月をもちまして、取り扱い終了いたしました。
シール壁紙
道具も極力使わず、もっと簡単に施工がしたいという方にはシール壁紙がおすすめです。
白系大理石の代表格「ビアンコカララ」、色味のある「エンペラドール」からはベージュ系の「ライト」と重厚感のある「ダーク」のラインナップで3色展開。
白のビアンコカララは、滑らかな「マット」と艶のある「グロス」の2種類が選べます。
壁に貼るもよし、机の天板やスイッチプレートなどのちょっとした場所でも、主張しすぎず品良く存在感を示してくれます。
このシートは強粘着なので原状回復は望めません。
それでは困る、という方にはがせるタイプのシール壁紙はいかがでしょうか。
NU WALLPAPERは、柄が豊富で全米でも大人気のシール壁紙。
表面はビニール素材で、水回りにも貼ることができます。
憧れの大理石のお風呂で過ごす、優雅なバスタイムも素敵ですね。
床に使える商品
クッションフロア
床のリメイクにおすすめなのは、やはりなんと言ってもクッションフロア。
クッションフロアとは、クッション性のあるビニール製のシートです。施工しやすく柄も豊富で人気の床材となっています。
とくに白の大理石柄は、ここ最近でとても需要が増えています。
ホテルのようなドレッシングルームや、シックで女性らしいお部屋づくりにもぴったりですね。
フロアタイル
クッションフロアより本物に近い光沢感や強度をお求めの方は、フロアタイルもよいかと思います。
▼※楽天市場店のページへ飛びます。
タイルでありながら柔軟性もあり、カッターでカットすることができます。
土足で踏んでも大丈夫な耐久性と、傷のつきにくさも魅力的です。
色や柄の選び方
気になる商品は見つかりましたでしょうか?
ご紹介した商品の中にも定番の白以外のデザインがちらほら見受けられたかと思いますが、一口に「大理石」と言っても、とても多くの種類があります。
例えば最も有名な「ビアンコカララ」は、芸術の都フィレンツェがあるトスカーナ州のマッサ=カッラーラ県で採掘される石種。
「カッラーラ」県で採れる「ビアンコ=白」が名前の由来となっています。
他にも「ペンテリコン」というパルテノン神殿に使われているものや「白大理石」と呼ばれるものまで、その数およそ300種以上。
色は、石に含まれる鉱物の密度や量によって変わると言われていますが、その固有の「マーブル模様」は濃さやムラ感で印象を大きく左右します。
選び方や使い方に迷うこともあるでしょう。
使う面積が広すぎると、石特有の冷たい印象になったり、濃い色はお部屋が暗く狭く見えたりすることも。
どんな場所にどのくらいの面積を貼りたいのかによって、色やマーブル模様の具合を考えるのも大切かと思います。
色が濃いデザインはアクセントとして、広い面積に貼るときは白などの淡く派手すぎないものを選ぶと、圧迫感が少なくて良いかもしれません。
もちろん逆もまた然り。
気に入ったデザインを選んでから、貼る場所を探すのもいいでしょう。
おすすめの組み合わせ
大理石は、組み合わせる色によっても表情をがらりと変えます。
では、相性のよいカラーをいくつか挙げてみましょう。
大理石×ゴールド
まずはゴールドとの組み合わせ。
高級感のある素材と色のコンビネーションが抜群です。
部分的にバランスよく金色を取り入れると部屋全体の統一感もアップします。
マーブル模様自体にゴールドを取り入れたデザインも!
大理石×ブラック
次にブラックとのマッチング。
明るめの色味の大理石と引き締まった黒が合わさると、都会的でモダンな印象に。
モノトーンのインテリアは、コーディネートに自信がない人でも比較的簡単にお洒落に見せることができます。
中間色であるグレーを取り入れると、より柔らかい印象になります。
大理石×ロイヤルブルー
最後に、私が個人的におすすめしたいロイヤルブルーのコーディネート。
ロイヤルブルーとは、イギリス王室で定められた公式カラーです。
少し紫がかった濃いブルーは、どこか落ち着きと気品を感じる色合いになっています。
ゴールドとも組み合わせれば、クラシックでエレガントな英国王室のようなテイストに。
エピローグ
実態を知ることで、高嶺の花だったその石も、
手のひらに納まる距離感になったのではないでしょうか。
シンプルでありながら優美に漂う流線形は、
まさに自然が生んだ芸術作品そのものです。
その石は、これからもずっと長い間、
世界中の人々に愛され続けていくことでしょう。
免許を取得して早6年半、ようやく駐車が上達した週末ドライバー。