アスファルトが鏡の如く日差しを反射し、眩しさに細めた視界の先でかげろうが揺らめきます。
Tシャツはじっとりと肌に張りつき、耳に響くのは蝉の大合唱。
これから語るのは、どこかの誰かの、とある夏の出来事です。
ひと夏の思い出を壁紙とともにふり返る、そんなおはなし。
七夕
7月になりました。
梅雨はまだ幕を下ろしませんが、気温はぐぐっと高くなり夏が近づく気配を感じます。
風呂上がりの暑さに耐えきれず、物置から扇風機を引っ張り出してきました。
ふとカレンダーを見て気が付きます。「そういえば今週は七夕だな」と。
七夕といえば、一年に一度だけ織姫と彦星が会うことを許される日。
天の川を隔てた二人のロマンチックな恋の物語が夜空で繰り広げられます。
近所にある天文台では、毎年七夕の日に天体観測のイベントが開催され、子供から大人まで多くの人が参加します。
星座早見盤と虫よけスプレーを片手に、見晴らしのいい丘の上でみんな揃って星を眺めるのです。
昨年は曇ってしまって姿を現さなかった夏の大三角。
今年は見ることができるでしょうか。
星空の壁紙
海の日
週末は待ちに待った三連休。
なんの祝日だったかな、とカレンダーに目をやると「海の日」の文字がありました。
そういえば今朝のニュース番組でようやく梅雨が明けたと言っていたことを思い出します。
本格的な夏の到来です。
その時、机の上に置いていたスマートフォンがピロンと音を立てました。
確認してみると「次の休みにドライブへ行こう」というお誘いのメッセージでした。
「いいよ」と返事を送ると、数秒後すぐに「どこに行きたい?」と返ってきました。
目を閉じて想像します。
やはり思い浮かぶのはひとつしかありません。
意気揚々と返答を打ち込みます。
「海に行こう!」
海のステッカー
海の壁紙
猛暑日
今日はとびきり暑い猛暑日です。
昇る太陽の後を追うように、温度計の数字もどんどん上がっていきます。
いささか調子がよくない家のエアコンでは、この酷暑を乗り越えられそうにありません。
玄関ドアを開けてむせかえるような熱気を感じながら向かうのは、涼しくて静かで長居できる出費のかからない場所。
中に入ると、ひんやりと心地よい空気が全身を包みました。
心なしかいつもより人の数が多いように思います。
きっとみんな同じことを考えてここに辿り着いたのだろうなと思うと、少し頬が緩みました。
所狭しと並べられた本の背表紙に目を滑らせながら、気になった一冊を持って端の席に腰を下ろします。
辺りを少し見回し、ほっと一息。
家の壁一面が本棚だったら面白いだろうなぁなんて妄想しながら、本の世界へと吸い込まれていくのでした。
本棚の壁紙
図書館の壁紙
山の日
お盆を目前とした本日は、カレンダー曰く「山の日」らしいです。
山の日なんて昔はあっただろうかと思いつつ、ほこりっぽい部屋の引き戸に手をかけました。
先日扇風機がなかなか見つけられなかったので、雑然としていた物置の整理にようやく取り掛かることにしたのです。
廊下が断捨離した物で溢れかえってきたころ、奥の方から大きなバッグが出てきました。
中身は、おととしの夏に購入したキャンプセット一式。
森林浴が健康にいいと聞いて、新しい趣味にでもしようと意気込んで購入したものです。
活躍したのは片手で数えても指が余るほどの回数ですが。
「せっかくだし家の中にテントでも立てて、山じゃなくて壁でも登っとくか」とばかばかしい冗談を口にしつつ、内心わくわくしながらテントを居間へと運びました。
物置の整理はまた今度。
ボルダリングパネル
山・森の壁紙
お盆
瞬く間にお盆がやってきました。
在来線をいくつも乗り継ぎ、何時間も電車に揺られながらの帰省です。
実家は、移動に車が必要不可欠となるような田園風景が広がる田舎にあります。
周囲には遊びに行くようなショッピングセンターもないので、散歩に出るか家でだらだら過ごすのが通例です。
縁側でごろんと寝転ぶと居間の壁が目に入りました。
薄く汚れた昔のままの繊維壁に、流水紋のふすまには幼い頃破ってしまった際の補修跡が刻まれています。
懐かしさと安堵の心地で自然とため息が漏れました。
庭を駆け回る飼い犬と花壇で背筋をピンと伸ばして咲いた立派なヒマワリ。
咀嚼するたびシャクシャクと鳴るスイカに、チリンと涼やかな音色を響かせる風鈴。
時折風に乗って香る蚊取り線香のにおいを感じながら思います。
「日本の夏っていいなぁ」と。
ヒマワリの壁紙&ポスター
スイカの壁紙&ポスター
和柄の壁紙
残暑
まだじめっとした暑さは残るものの、だんだんと日が暮れる時間が早まり、夜になると秋らしい虫の声が遠くに聞こえるようになりました。
夕飯の買い出しで寄ったスーパーで、何年かぶりに手持ち花火を購入。
今夜はささやかな花火大会です。
暗闇を煌々と照らす色とりどりな光に目を奪われます。
いつしか最後の一本となっていた線香花火の火の玉が、ぽとりと地面に溶けていきました。
同時に、夏が終わりを告げたようで妙な寂しさがじわりと胸に染み渡ります。
長いようで短かった今年の夏。
たくさんの思い出とともに、静かに幕を下ろすのでした。
いつの日からか、誕生日を聞かれるたび「夏生まれっぽくないね」と言われるようになった真夏のお盆に生まれた人。
昔は外を走り回る元気な子でした。